Nina Library #03 勇敢な魂だから、私たちはオンナに生まれた -女性性の深淵を映す『ヒロインの旅』-

ヒロインの物語。
と言ったら、どんな物語をイメージしますか?

例えば、シンデレラ?白雪姫?

実はそれらの物語は、ヒロインではなく、ヒーローの物語です。

アメリカの神話学者ジョセフ・キャンベルが、世界中の神話を比較研究し、その中に共通するパターンを見つけて「ヒーローの旅」という概念を提唱したのは1949年のこと。この概念は未だに多くの物語、映画、文学作品に影響を与えています。

そんな世界観で育った私たちは、幼少期から知らず知らずのうちに、ヒーロー、すなわち男性原理の人生成功哲学を植えつけられているのです。

一方、現実はどうでしょう。

男性と同じようなキャリアを歩もうとすれば、女性には様々な障壁があります。

ライフステージで言うと、結婚・妊娠・子育て、親の介護… 。日常的にだって、月経周期に伴う心身の変化が伴います。
こと女性に関して言えば、何かを犠牲にしなくては社会的成功は掴めない。そんな暗黙の風潮が長らく社会を覆っていたのではないでしょうか。

今から40年以上前の1981年、今回ご紹介する書籍の著者 モーリーンが、前出のキャンベル氏にインタビューをしたところ、彼は「女性に旅は不要だ」と話していたようです。

「神話の女性はただ ”存在” するだけです。女性は”人々が目指す行き先、たどり着く場所”。自分でその価値に気づけば迷わずに済みます」と。

その時、彼女は唖然としました。

“人々が目指す行き先、たどり着く場所”とは?
ギリシャ神話のペネロペは機織りしながら夫を待ったけれど、現代女性には新しい生き方の指針が必要なはず。女性たちにも旅が必要なのだ。

そう思い、執筆したのが本書『ヒロインの旅 ー 女性性から読み解く<本当の自分>と創造的な生き方 ー 』

心理カウンセラーとして多くの女性と向きあった彼女ならではの視点から神話を改めて紐解き、女性の豊潤な精神世界を詩的に描いています。

女も旅をする。自分の価値を知り、心の傷を癒して女らしさを享受する旅だ。
それは大切な内面の旅であり、バランスのとれた人格形成を目指して歩む。
この旅はヒロインにとって難しい。目印も案内人も地図もなく順番通りのルートもない。人に認められることもほとんどない。むしろ無視され、邪魔される。
source| ヒロインの旅 ー 女性性から読み解く<本当の自分>と創造的な生き方 ー 』より

上記の言葉こそが、全てを物語っています。

円環する「ヒロインの旅」。スタートは円の上部中央。生まれてすぐに、女性性から分離されるのだ。そこから女性性を取り戻し、傷ついた男性性を癒し、最終的には統合していく偉大なジャーニー。拡大解釈すれば、これは地球(ガイア)自体のジャーニーでもある。

上の写真にもある通り、ヒロインの旅はそう単純ではありません。

ヒロインは深い深い闇の中を、時には血反吐を伴いながら旅するのです。本書では辛い内省の時期を「冥界下り」と表現し、自分で自分を妊娠するようだ、とも例えています。

今、もし貴女が苦しんでいるなら、それは冥界下りの最中なのかもしれません。
どうしてこんなに苦しいのか… ヒントの星の欠片たちが本書の中に沢山散りばめられています。

私の場合、本書に登場するグレートマザーの鯨の描写に触れた時、とめどなく涙が流れました。私の中のグレートマザーと深く共鳴したのだと思います。

困難な旅をも乗り越える勇敢な魂を持っているからこそ、私たちはオンナとして生まれてきたんだと確信に至った本書。人生を真剣に生きる女性にとって、大いなる励ましと共に、偉大な指針を得ることになると思います。

ピンとこられた方は是非ご一読ください。

『ヒロインの旅 ー 女性性から読み解く<本当の自分>と創造的な生き方 ー 』

著者|モーリーン・マードック
訳者|シカ・マッケンジー
発売|2017年4月
版元|フィルムアート社
原書|The Horoine’s Journey:Woman’s Quest for Wholeness

– 目次 –
1章 女らしさを離れて
2章 男らしさに自分を近づける
3章 試練の道
4章 成功の幻想
5章 拒否する強さ
6章 通過儀礼と女神への下降
7章 女性性を見直す
8章 母/娘の断絶を癒す
9章 ハートがある男を探して
10章  二元性を超えて

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