連載小説『月の裏側』|ニナのフラッグシップコンテンツ
満月と新月の夜に更新予定。
自己規律の強い40歳の既婚女性が、ある時、夫ではない男に恋愛感情を持ち始める。
動揺する中、様々な価値観を持つ人々との出会いを通じて、「オンナ」という生き物に還っていくさまを描く。
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月の裏側 – 第28夜 - アンティーク食器と憂いの朝
前回のあらすじ香子は、二十歳年下の青年・紺と母との食卓を囲みながら、亡き父との断片的な記憶を想起する。酔った母を見送り、二人きりになった夜のプールサイド。風に揺れる水面の煌めき、幻想的な情景、そして言葉を超えた心の交流によって、紺と共に... -
月の裏側 – 第27夜 - 紺と子宮の中
前回のあらすじ父を亡くし、母・由紀子と共にジャワ島を訪れた香子は、遺跡でひとりの日本人青年に出会う。柔和な佇まいの裏に歴史への深い洞察と抑えきれぬ憤りを宿すその青年は、由紀子の誘いで共に夕食をとることに。香子の中で、青年の姿は夫の若き日... -
月の裏側 – 第26夜 - 仏たちの青史
前回のあらすじ香子と母・由紀子は、亡き父への思いを胸に、ボロブドゥール寺院を訪ねる旅に出る。夫の梶の提案で選んだこの地には、かつて眠りについていた巨大な仏教遺跡がそびえていた。観光ガイドのラフマが陽気な調子で遺跡の構造や仏教宇宙観につい... -
月の裏側 – 第25夜 - ストューパと洒落
前回のあらすじ父の四十九日を前に、香子は母と共に南国ジャワ島を旅していた。馬車に揺られながら、かつて父が煙草を燻らせながら呟いた「人は信じる真実がなければ嘘を信じる」という言葉を思い出す。異国の御者の男に抱いた第一印象と、その後に浮かん... -
月の裏側 – 第24夜 - ジャワ更紗と馬車に揺られる
前回のあらすじ10年前のある日、香子は他愛のないことで梶と喧嘩をしてしまう。感情的になり赤ワインを梶のシャツに引っ掛けてしまった香子は居た堪れなくなり、自宅を飛び出した。閉店間際の喫茶店に入店すると、マスターから今夜は皆既月食だと聞くが、... -
月の裏側 – 第23夜 - 猫と赤銅色の月
前回のあらすじ香子の父の葬儀から3日経った朝のこと。梶が香子と母の二人で遠地の旅に行くことを勧めた。しかし梶は女性を魅了する人物だけに、自宅を長らく不在にすることに躊躇いがあった。加えて、自分との距離を置かれるような提案自体が嫌だったの... -
月の裏側 – 第22夜 - 半裸の林檎と濡れた髪
前回のあらすじ香子の父 幹雄の葬儀で、香子は荼毘にふされた父の亡骸を複雑な想いで見ていた。父のために生涯を捧げた母のすっかり痩せこけた姿を、未来の自分の姿として重ね合わせると俄かな恐ろしさを感じた。母と遺影を持つ夫である梶の間に立ち、己の... -
月の裏側 – 第21夜 - 骨と未亡人
前回のあらすじ香子はパーソナルジムで自分の体重と同じくらいのバーベルを持ち、危なげながらスクワットをしていた。力の限界に達した香子に対して、トレーナーらしき男が香子の身体をまさぐり愉悦に浸る。27歳のその男との出会いは、父が死んだ年に、母... -
月の裏側 – 第20夜 - バーベルとシルクの肌着
前回のあらすじBACKSIDE BARの夜から3日後の月曜日。由羅と成美はメールでやり取りしていた。その内容によると、梶の行動によって大きく動揺した由羅は、子供の発熱を理由に突然帰宅したようだ。しかしそれは、その場に居た堪れず立ち去るための口実だった... -
月の裏側 – 第19夜 - 美しさと正しさ
前回のあらすじ総務部時代の後輩である高橋を珍しく昼休憩に誘う由羅。3日前のBACKSIDE BARでの出来事によって梶のことが頭から離れないため、少しでも以前の調子を取り戻したい一心だった。休憩時の会話から、20代の高橋と同世代の梶や成美さえも自分と... -
月の裏側 – 第18夜 - 不健康な妄想とサラダボウル
前回のあらすじ裕福な家庭に生まれた謎の女、香子。その名は「こうこ」と読むが、父からはココ・シャネルから引用された「ココ」という愛称で呼ばれていた。16歳のある日、父からの紹介で2つ年上の男子美大受験生のために全裸のデッサンモデルを務めると、... -
月の裏側 – 第17夜 – ココとカオルコ
前回のあらすじ梶の思わせぶりな態度や過去の記憶を想起し、動揺しながらも甘美な感覚に酔いしれる由羅。梶と成美が楽しげに笑い合う姿を見て、ついに2人の仲を問い正すが、梶から結婚にまつわる想念を指摘され絶句してしまう。そんな由羅に対して梶はシガ...