後編|元吉原ソープ嬢 色街写真家 紅子を通して「性風俗」を見つめる

風俗業界はどうなる

現在では現役風俗嬢からのポートレート撮影依頼も相まって、被写体は風景だけでなく人物にも幅を広げている紅子さん。

依頼主の嬢たちは、男女の機会差が無くなり、新たな職種も登場している世の中において、それでも敢えて風俗業界を選択した女性たちだ。ひと昔前のように選択肢が無いからやっているのではなく、それぞれの信念を持って、目の前の客に奉仕している。古代より子孫繁栄・豊穣として高潔な扱いとされていた性交渉が、文明の発達によって不必要に歪んだ存在になってしまったが、そういった女性たちが登場することで、性風俗の建前や位置付けは今後も時代と共に変遷していくのだろう。

何しろ今回の執筆を機に、人生で初めて風俗関連のありとあらゆるサイトやブログなどを検索しまくり読み漁っていたわけだが、とある男性向け転職サイトに辿り着いた際には若干驚いた。風俗業界がもはやアングラではなく、限りなく一般の業界に近づいているとの触れ込みで推奨されていたからだ。

そのサイトによれば、風俗産業の市場規模は年間5〜7兆円の巨大産業であり(例:広告業界7兆円/ 年)これからも拡大傾向にあって、時代が変わっても絶対なくなることはない業界との展望だ。

しかし、個人的にその展望には少々眉唾だったりする。話は唐突かもしれないが、イーロン・マスクが運営するニューラリンク社を例に上げたい。同社で脳プラントの臨床試験()が昨年以降行われているわけだが、このような技術が発展する先に、もしかすると性欲を抑えることだってできるようになるのではと想像してしまうのだ。(例えば、性犯罪を無くす等の目的で)
() 脳にチップを埋め込み、利用者が“考えるだけ”でスマートフォンやパソコンなどを操作できる技術の臨床試験

さらにその先には肉体の重要性すらなくなる時代が来るという説もあって、SFチックでありながら、あながちあり得なくもない。だとすれば、性欲解消のためのビジネスは元より、性交渉の神聖さ自体にも疑問符がつくことになるだろう。もっともAIが登場して以降、広範囲において「人間を人間たらしめるものとは何か」という究極の問いが、既に私たちの目の前に立ちはだかっているのだ。

技術革新が進んだ未来は、対人コミュニケーションにおいて究極の効率化が進むかもしれない。セックスが非効率なものとして捉えられ衰退の一途を辿っていくことになれば、色街写真家 紅子による様々なアウトプットは、日本における性風俗史にとどまらず、人類の文化的記録として益々貴重なものになることは間違いないのだ。

最後に

遡ること半年前から紅子さんを通して性風俗を”見つめる”機会を得ることができた。性風俗を”知る”、或いは、”分かる”というには甚だ経験値が足りない私が、せめてできる ”見つめる” という行為から感じたものを、強いて一言で表すなら、「人間ゆえのまどろっこしくも尊い生命の営みや物語がそこにあった」ということだ。

女性が搾取されているという当初の感覚については、史実からしても払拭されることはなかったが、移ろいゆく時代の中で、いつしか性交渉が如何わしいものとして捉えられてしまったことで、人々が「性」を日常生活の俎上に置くことにネガティブになってしまったのだと一周改まって再解釈する。

例えば、前出の通り紅子さんの親としての資質を批判する声が上がっているのを見てみても、現代の性教育もその偏見がベースになっており、腫れ物に触るかのような存在になっているのは問題だと自戒も込めて感じている。

性があるからこそ、人類は脈々と命を繋いできた。至極当たり前に尊いことなのだ。これまでの”人間ゆえのまどろっこしい生命の営み”が、科学技術の発展で劇的に変化することがあったとしても、性がイノチそのものであることは、引き続き変わらない真理だと思っている。

Nina Novembre における「性はイノチそのもの。」の真理を、今後もできるだけ多角的に言語化していきたい。

Thank you for interview !

Ms. Beniko|Photographer, YouTuber
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2024年8月 取材した日の別れ際
可愛らしい笑顔で玄関まで挨拶してくれた紅子さん

第2弾写真集制作のためのクラファン実施中(2025年1月末まで)
写真集売上の一部を女性支援団体、遊廓に関連する史跡を保全している個人・団体に寄付するチャリティーも兼ねているという本プロジェクト。収録する作品の中心は冬景色の遊郭跡地を予定しており、今まさに撮影に当たっているようだ。集まった支援金はその活動費等に充てられる。
子育て中の慎ましい生活においても、たゆまぬ自己表現と社会貢献に励む姿は”人生の芸術家”という名に等しい。紅子さんのご活動に賛同する方は支援をご検討いただきたい。

クラファンの詳細はこちら

紅子作品を実際に鑑賞したい場合
本編で紹介の飛田新地(大阪)と吉原(東京)の2大遊郭跡地で個展の開催が確定しているようだ。興味があれば、足を運んでみては如何だろうか。写真と実際の場所を一度に両方味わえるのは贅沢な体験だ。
<個展会期>
東京(吉原・カストリ書房内 4/27〜5/6)
大阪(飛田新地料理組合内 5/17〜5/25)

source|https://note.com/benikoiromachi/n/n8b3a84117442

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